今からおよそ100年前に出版された石井柏亭の「我が水彩」という本です。
石井柏亭という人は明治から昭和にかけて活躍した洋画家で、Wikipediaには・・・父は日本画家の石井鼎湖で、弟は彫刻家の石井鶴三である。・・・11歳の時から柏亭と号して日本美術協会や青年絵画共進会に作品を出品、これ以降、毎年作品を出品しながら、印刷局工生として彫版の見習い生となっている。1897年(明治30年)浅井忠に入門し、油絵を学び・・・とあります。その後、1904年(明治37年)22歳の時に、東京美術学校洋画科に入学しましたが、眼病のために中退したそうです。ちなみに東京美術学校の設立は1887年(明治20年)です。
この本には石井柏亭の幼少期の父との関係や、印刷局で働く合間に水彩画を描いたこと、浅井忠に教わった時の話などが詳しく書かれているので、おそらく上記のWikipediaの内容はこの本が情報源の一つだと思われます。
本の内容としては1,2章で水彩画がどのようなものかを道具の選び方も含め説明していて、3、4章では自身の経験から絵を描く時の姿勢を示し、5~8章でより専門的な内容の講義があり、9章からは柏亭自身の作品を使って様々なモチーフの描き方を説明しています。カラー図版も数点使われていて、当時としてはかなり贅沢な一冊だったのではないかと思います。自伝的要素もあり、歴史的資料としても価値のある一冊だと思います。
奥付を見ると大正2年(1913年)に初版が出版されたあと毎年増版されていて、この本は大正8年(1919年)の第6版です。そのころのロット数がどれほどなのかは分かりませんが、それなりのベストセラーだった様に推測されます。
石井柏亭
1882年(明治15年)~1958年(昭和33年)