美術出版社の絵画技法講座という本ですが、どうやらこれは全部で6冊出ていた中の第1巻のようでした。残念ながら残りの5冊はまだ無いので、今後見つかり次第紹介したいと思います。
この本の初版は1953年(昭和28年)で、これは1974年(昭和49年)の22版です。
内容は一般向けというよりも、受験生や画学生向けに作られている感じです。しかしその分、デッサンとは何たるかが、道具の揃え方から描く時の姿勢まで、しっかりと書かれていますし、何より参考図版が充実していて、資料としては申し分ない内容です。
それ以上に執筆者がとても豪華だと思いました。硲伊之助は1950年まで東京美術学校の助教授で、小磯良平はこの初版発行の1953年に東京藝術大学の教授になっています。また、猪熊弦一郎は三越の包装紙をデザインした頃で、安井曾太郎は1952年に文化勲章を受章しています。まさに当時の日本洋画家オールスターズといった方々が、自身の経験も踏まえて、学生向けにデッサンについて講義されているのは、なんとも贅沢な一冊です。
硲伊之助
1895年(明治28年)~1977年(昭和52年)
小磯良平
1903年(明治36年)~1988年(昭和63年)
猪熊弦一郎
1902年(明治35年)~1993年(平成5年)
安井曾太郎
1888年(明治21年)~1955年(昭和30年)