前田寛治畫論

 早世の画家、前田寛治の絵画論や翻訳、エッセイをまとめた内容の「前田寛治畫論」です。

 

 前田寛治は人物写実画の名手で、画家として10年に満たない活動の中で、古典的構図でのフォーヴィスム的筆致が「前寛ばり」という流行語を生んだりして、当時の芸術家に多大な影響を与えたそうです。


 本を読んでいくと重複する内容があったり、文体が違ったりしているので執筆の時期や出典元が様々だとわかります。その中でも随筆集や批評集の項目は人物と空間の関係が浮き上がってくるように書かれていて、前田寛治の絵画そのままを活字化したように感じられます。


 この本は昭森社が1946(昭和21)に出版したものですが、1930(昭和5)に金星堂から出版されたものもあります。どちらも外山卯三郎という人が編集しているのですが、どうやら金星堂の方は前田寛治が亡くなった年の出版なので、その外山卯三郎による前田寛治論など、故人を偲ぶ内容も収められているようです。この外山卯三郎という人は美術評論家で、前田寛治について特に力を入れて研究していて「前田寛治研究」という本も執筆されているそうです。


 追記:この本の内容に新たに随想を含めた形で「寫實の要件」という本が1999(平成11)に中央公論美術出版から出版されています



前田寛治 

1896(明治29)1930(昭和5)

外山卯三郎

1903(明治36)1980(昭和55)